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PRACTICAL GUIDE

SUSボルトに焼き付き防止剤を塗ると締付トルクはどう変わる?

焼き付き防止剤で摩擦が小さくなると、同じ締付トルクでも軸力が大きくなる可能性があります。SUSボルトを安全に締結するため、トルク・摩擦・軸力の関係を整理します。

締付トルクと軸力は別のもの

トルクレンチで管理する締付トルクは、ボルトやナットを回転させる力です。実際にフランジや機械を締結しているのは、ボルトがわずかに伸びることで生じる軸力です。設定トルクが同じでも、ねじ面と座面の摩擦状態が変われば、得られる軸力は変わります。

役割の違い締付トルク:ボルトを回す入力軸力:部材を締め付ける力

基本式は T=K×d×F

トルク法の簡易的な関係は、T=K×d×Fで表せます。Tは締付トルク(N・m)、Kはトルク係数、dはボルト呼び径(m)、Fは軸力(N)です。Kは、ねじ面・座面の摩擦、表面処理、潤滑剤、締付速度などの影響を受けます。

軸力について解くと、F=T÷(K×d)です。したがって同じTとdなら、潤滑によってKが小さくなるほど、計算上の軸力Fは大きくなります。

M20を100N・mで締める計算例

トルク係数の影響を見るための単純化した例です。実際の施工トルクを指定するものではありません。

乾燥状態を仮定:K=0.30F=100÷(0.30×0.020)=約16.7kN
潤滑状態を仮定:K=0.20F=100÷(0.20×0.020)=25.0kN

この仮定では、同じ100N・mでも軸力は約1.5倍です。東京都立産業技術研究センターも、締付トルクの多くはねじ面・座面の摩擦に使われ、摩擦係数は表面処理や潤滑条件で大きく異なるため、条件を考慮した締付管理が必要だと説明しています。

「滑るから強めに締める」は危険

焼き付き防止剤で回転が軽くなった状態に、乾燥時と同じ、またはそれ以上のトルクを与えると、狙いより高い軸力になる可能性があります。過大な軸力は、ボルトの塑性変形、ねじ山の損傷、ボルト破断につながります。

現場の原則

潤滑したボルトへ、根拠なく乾燥状態のトルク値を流用しないでください。使用する焼き付き防止剤、ボルト・ナット、表面処理を含めた指定値を優先します。

SUSは焼き付き防止と軸力管理をセットで考える

SUS304・SUS316などのステンレス製ねじは、締付時の摩擦や発熱、材料同士の凝着による焼き付き・かじりに注意が必要です。焼き付き防止剤は有効な対策ですが、摩擦を変える処置でもあります。かじりを防ぐことと、適切な軸力を得ることを同時に検討します。発生の仕組みと施工時の予防は、SUSボルトのかじり・焼き付き対策で詳しく解説しています。

焼き付き防止剤は製品ごとに条件が違う

グリス、金属粉入りペースト、フッ素系、固体潤滑剤、コーティングなどでは摩擦特性が異なります。「SUSに塗布したら一律で何N・m」とは決められません。製品の技術資料にトルク係数・摩擦係数・トルク補正値が示されている場合は、その条件を確認します。

フランジボルトではガスケットも確認

配管フランジでは、ボルト軸力がガスケットの面圧に影響します。軸力不足は漏れ、過大な軸力はガスケットの過圧縮、フランジへの過大負荷、ボルトの過伸びやねじ損傷につながる可能性があります。呼び径だけでトルクを決めず、フランジ、ガスケット、ボルト、潤滑条件を含む設計・メーカー指定を確認します。

現場で確認する6項目

  1. SUSねじは焼き付き・かじりの可能性がある
  2. 指定された焼き付き防止剤・表面処理を使用する
  3. ねじ面だけでなく座面の潤滑条件も確認する
  4. 乾燥状態のトルク値をそのまま流用しない
  5. 製品資料のトルク係数・摩擦係数・補正値を確認する
  6. 重要締結部は設計者、ボルト・ガスケットメーカーの指定を優先する

まとめ

焼き付き防止剤を塗ると摩擦が小さくなり、トルク係数が変化します。そのため、同じトルクでも軸力が大きくなる場合があります。SUSボルトでは「焼き付かせないこと」と「適切な軸力で締めること」の両方が重要です。経験則だけでトルクを決めず、実際に使用する部材と潤滑条件に合った指定値で管理してください。

参考資料

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