PRACTICAL GUIDE
SUSボルトはなぜ焼き付く?かじりの原因と防止方法
締付途中で急に重くなり、締めることも緩めることもできない。SUS304・SUS316などのステンレス製ボルトで起きやすい『かじり・焼き付き』の原因と、現場でできる予防を整理します。
SUSの「かじり」「焼き付き」とは
かじりは、ボルトとナットの金属表面が高い接触圧力のもとで擦れ、局部的に凝着して、ねじ山がむしれたり固着したりする現象です。現場では「SUSのボルトが焼いた」「ナットがかじった」と表現されます。強く固着すると通常の工具では外せず、切断・交換が必要になることもあります。
なぜSUSボルトで起きやすいのか
ステンレス表面には耐食性を支える薄い不動態皮膜があります。しかし締付中のねじ山には高い面圧と滑りが生じ、表面が局部的に損傷すると、露出した金属同士が凝着しやすくなります。凝着した部分が引きはがされてねじ面が荒れると、抵抗と発熱がさらに増え、固着が急速に進む場合があります。
インパクトレンチで注意する理由
高速締付けでは短時間に繰り返し滑りが生じ、摩擦による温度上昇を招きやすくなります。インパクトレンチは回転と打撃が速いため、手工具なら気付ける「急に重くなった」という変化を見逃し、そのまま損傷を進めるおそれがあります。
最初の数山は必ず手で回し、斜めに入っていないことと、ねじが滑らかに進むことを確認します。工具を使う場合も、最初から最後まで高速で一気に締めず、指定された締付方法と速度を守ります。
現場でできる5つの防止方法
1.適合する焼き付き防止剤を使う
ねじ面の摩擦を抑える焼き付き防止剤・潤滑剤は有効です。ただし潤滑すると、同じトルクでも軸力が変わります。重要締結部では製品資料や設計仕様に合うトルクを使用してください。詳しくは焼き付き防止剤と締付トルク・軸力の関係で計算例を掲載しています。
2.ねじ山を清掃する
鉄粉、切粉、砂、錆、シール材の残りなどの異物は、局部的な抵抗と傷の原因になります。施工前にボルトとナットの両方を確認し、異物を除去します。
3.最初の数山は手で入れる
ナットを斜めに入れて工具で強制的に回すと、ねじ山へ異常な荷重がかかります。手で数山以上スムーズに進むことを確認してから工具を使用します。
4.高速で一気に締めない
過度な締付速度を避け、途中で抵抗が急増したら停止します。無理に正転・逆転を繰り返すと、軽いかじりを完全な固着へ進めることがあります。
5.傷んだボルト・ナットを再使用しない
ねじ山に傷、変形、むしれがある部品は交換します。一度焼き付いた組合せは、外せてもねじ面が損傷している可能性が高いため、重要箇所では新品への交換を基本に検討します。
急に重くなったら無理に回さない
締付中に抵抗が急増したら、かじりが始まっている可能性があります。インパクトで無理に回し続けず、部品の交換や切断を含めて処置を判断してください。
「かじり」と「焼き付き」の違い
現場ではほぼ同じ意味で使われます。技術的には、かじりは凝着によって表面がむしれ、損傷する現象を指し、焼き付きは摩擦・発熱を伴って固着が進み、動かなくなった状態を指すことがあります。施工判断では、どちらも抵抗が増えた時点で止めることが重要です。
施工前チェックリスト
- ボルト・ナットの材質と組合せは仕様どおりか
- ねじ山に傷、変形、異物がないか
- 焼き付き防止剤の種類と塗布箇所は指定どおりか
- 最初の数山を手でスムーズに回せるか
- 締付速度とトルクは潤滑条件に合っているか
- 途中で抵抗が増えたとき停止できる手順になっているか
まとめ
SUSボルトのかじり・焼き付きは、高い接触圧力のもとでねじ面が擦れ、金属表面が凝着・損傷することで進みます。ねじ山の清掃、手回しによる噛み合い確認、適切な焼き付き防止剤、過度な高速締付けの回避、異常時の停止が基本です。SUSの耐食性を生かすためにも、材料特性を理解して施工し、手戻りや切断交換を防ぎましょう。
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